物理的な傷であればいいと思っていた。名誉でも勲章でもなく、ただの失態、汚名、恥の象徴として刻まれた悔いであればいいと。そしてそれが尚一層、彼の強さを増幅させたらいいと思っていた。そんな身体じゃ戦えないだろう、だと?誰に物言ってんだ。って言って欲しかったんだ。悔しさを隠して血が滲むほど歯を食いしばって。
戦えなくなることは彼の魂の死だと思っていたから、現実を受け止めることがずっと恐ろしくて堪らず、記憶の中の兵長像を撮影し続けることはあまりに息苦しく不自然だと理解してもいた。
犬死にしてほしくはない。けれど、戦場以外で没してほしくもない。どちらを向いても地獄、なのだろうけど、地獄の中燃え盛る火焔のように生きて、生きて、生き尽くしてほしい。
願わくは、その右眼よ、ひらけ。