もうずっと長いこと、コスプレは罪だなあと考えていた。キャラという姿を借りて、自分の人生では叶わないことを叶えることができる。ケッコンだって何度でもできる。やり直しがきかないことも、リベンジ撮影という名で上書きして塗り替えることができる。
でも今回、式が決まった時からトクベツで、それは「もうきっと結婚式は挙げられないんだろうな」と諦めていた夢が叶うとわかった瞬間で、人生一度きりの舞台を悔いないものにしようと思っていた。そう思わせてくれたし、一緒にそう思ってくれた。
あの決して立派ではないチャペルで、それでも綺麗に晴れた冬の空を望みながら、まっすぐ前を向いて立って2人で見た景色を、忘れないと思う。ヴェール越しに見た世界の美しさもヴェールを纏う時間の尊さも、全てが「結婚式っていうものは、こんな気持ちになるものなんだ」と感じる瞬間だった。もし自分が彼だったならば、世界がどんなふうに見えてどう感じられるか、それを感じるために撮影している…と、まさにその言葉通りの体験だったのかもしれない。
2人には感謝を尽くしても足りない。誰よりもリアルで誰よりも本気で、誰よりも幸福だったと思う。ありがとう、ありがとう。