この記事、誌面で読めるなら購入してずっと手元に置いておきたいくらい、よかった。
最近映画を見に行くと、期待していたものではないものを胸いっぱいに得て帰ってくることが多く、幸せな誤算だと思っている。今回もそうだった。売れない作家役の福山雅治さんの少しくたびれた姿を見てみたいと思っていたのに、散々泣かされた。奇跡は起こらない、けど、ひとが一歩踏み出すことで、止まったままの過去が動き出し、ひとつの救いがうまれた。表面上は何一つ変わらない日常の中に、たくさんの物語があった。止まったままの時間なんてものは本当は存在していなくて、誰かがそれを思い出すことで今に繋がる生きた時間になるのだろう。
高校時代、現在。2人の役者をひとつに繋ぐ表現は外見上の要素より、1人の人物を演ずるため魂を重ねることで、叶うのだと思った。
魂の、こころの見える映画。文字、ことばが有する威力。ただの伝達手段ではなく、意志を持った文章たち。そして、姿無くとも「なまえ」というもののもつ、圧倒的存在感。
感想も何も言えないけど、とにかくこの作品の透明感に自分の心も洗われた。夏の終わりの日差しと強い緑に自分の中の昏さも照らされた。ありがとう、ございました。
いつか原作を、読みたい。福山雅治さんの読後感想は、「過去の傷みからの柔らかな解放感」だったそうだ。私は、どうだろう。
そしてまた、手紙を書きたくなった。